今、若者に伝えたいこと

「魏志倭人伝」は中華思想から、女王を「卑弥呼」と軽蔑しているが、これは普通名詞「日巫女」のことである。「日巫女」は夜明け前から祭場で祈って太陽の神霊を受けて数々の託宣や、吉兆を占う霊力に長けた巫女であった。古代社会では、神託は人間の意識を超えた神の意向であり、このような卓越した予言者は、人々の尊敬を受け部族集団の指導者であった。私の願うところは、戦後歴史学者にバイブル化されている「魏志倭人伝」なども、日本人の立場から批判し、記紀の日本資料も新しい視点で見直し、日本という国土に生まれた奥行の深い古典や、日本文化を学ぶことによって、日本というクニ意識をなくした人たちに、日本人と日本に自身を持つことを、これからの日本を支える若い世代に伝えたいからである。それは決して日本人や日本文化の優越性を説くものではない。

ただ四季に恵まれた素晴らしい日本列島の風土から生まれた日本文化の特異性に、日本人として誇りを持ってもらいたいからである。英語が話せて外国で活躍しても、
日本の生い立ちや王権継承の国体、国旗「日の丸」の意味、民族が歩いてきた歴史、素晴らしい文化の教養を身につけないと、外国人から決して尊敬されないということを、マスコミも学校教育も自覚してほしいと願うからである。

森川 禮次郎著 「古代大和を歩く」より

戻る